聖句「両親に従いなさい」…一考察

松橋 郁子

赤ちゃんが生まれてしばらくすると、お母さん達は「うちの子は1歳前だけどもう歩ける」とか、うちはおしめがとれたけど、お宅は?」なんて言われて焦ることなどなかったでしょうか?ハイハイよりも、立って早くから歩かせることの弊害もあり、最近はその子に任せて親は見守るというのが主流です。

どこのうちの親も、「賢く、逞しく、優しく、スポーツや音楽ができて自立した子になってほしい」と願っていることでしょう。中学校に勤務していたときに様々な子ども達を見てきました。どの子も家族からの愛と期待をたくさん背負って学校に来ます。

時に過度な愛と期待は、子どもたちにとっては重圧になることもあります。「私はあなたのことがとても大事なの。だから、将来のために勉強をうんと頑張って、いい学校に入りなさい。親の言うことを聞いていれば大丈夫よ。」…親とその子が同じ方向を向いていればよいのですが、違う場合には教育虐待となり、自立した子どもではなく親に束縛され依存した人間になりかねません。毎日の親子関係の大切さや、親としてどう子どもに接するのがよいのかを考えさせられる事例を私はいくつも見てきました。よく報道される親子関係の歪みによるハラスメントや、親への極端な依存からくる悲しいニュースは、それらがその子どもの一生の深い傷になるのだということを教えてくれます。

中学校で教えていたとき、面談の際によく言われたことがあります。「先生、うちの子は親の言うことを聞かないんです。勉強もしないしお手伝いもしなくて。先生が叱ってやってください。」…どうでしょうか。このママは子どもに対してギブアップなの?確かに中学生は一筋縄ではいかないもの。それまでの親子関係がしっかりとしているのであれば、その関係は注意したくらいで壊れるものではないでしょう。また、保護者で部活の大会の際に、お子さん方の道具を運ぶ方も実に多いです。顧問が「子どもたちに運ばせてください」と言っても、親自ら進んで大きな荷物を運び、一方子どもたちは当然とばかりの顔をします。逆に自分でなんとかする子どもたちは、余裕があり、他の友だちに手伝ったり、励ましたりすることが多いです。後者の子どもたちは家のお手伝いをし、町内の行事にも親と一緒に参加し、誰に対しても挨拶や受け答えがきちんとできる中学生です。小さい頃からそのように自然に訓練されてきたのでしょうね。そして彼らは口々に言います。「うちの親は厳しいよ。ゲームしすぎたらゴミ袋に入れられて捨てられそうになった。」「うちの親もだよ。アハハ!」笑いながら話すのです。

本荘幼稚園のパパママを見ていると、皆さん明るく元気!十年後、子どもたちは思春期まっただ中。狂瀾怒濤の年代です。親の明るさは家の光となります。現在は子ども中心になりがちな子育て世代ですが、まずはパパママが輝いていることが大切ですよね。

子供たち、主に結ばれている者として両親に従いなさい。それは正しいことです。(エフェソへの信徒の手紙6章1節)

子育てに迷ったら、「神さまだったら自分の子育てに何を願うだろう?」と自問自答してみてください。神さまは、自己中心的ではない、正しい愛をくださいます。両親に従わせられるのではなく、自ら進んで従う、正しい判断のできる人間に育ってほしいと思います。